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第5回 新世紀人文学研究会研究大会
​『満州事変(九・一八事変)90周年-言語文化と歴史の相克再考-』
開催趣旨

 『新世紀人文学論究』第6号では特集として「満洲事変」(九・一八事変)90周年にちなみ、言語文化研究、日本語教育研究、植民地教育史研究、社会科学研究における国内外の研究・教育者からの論攷を収録した。満洲事変そのものを対象とはせず、自由研究の体裁で論攷を募ることにした。

 十五年に及ぶアジア太平洋戦争の起点ともなった1931年9月18日は、中国では国恥記念の日であるが、日本の学校教育では歴史教育のうえでほとんど関心は払われていない。日中の歴史感覚の齟齬、懸隔はここに起因するとも思われるが、一方で日中双方に研究手法、観点に相応の懸隔があることも事実である。これは加害者側、被害者側という単純な二極的観点ではなく、歴史的に推移する研究手法の反映とも思われるが、本特集では現在の中国の見解を象徴する一篇も収録したのも、研究の現在地を確認するためである。日本の認識は「満洲とは何であったか」という書名に代表(象徴)されるように、自己告発的、個人としての内省がいわば「虫瞰図」的に語られるのに対し、中国の認識は、数字で一切を記憶、記録する。そこに私情は挟まれることはなく、国家として大局的に、「鳥瞰図」的に語られる。

 この「求心的」ともいえる感情と、「遠心的」ともいえる感情の相克は、研究対象にも、研究手法にもさまざまな影を落とす。歴史を多面的に研究することは、史実を立体化することでもある。そこに真の学際的交流と、相互信頼の対話が生まれることを期待したい。

日中の歴史認識を乗り越える。――それは容易なことではない。ただ、対立するのではなく、互いに吸収し合うこと以外に、理解し合える道はない。その一方で、日本にとっての「五族協和」「王道楽土」の理想は、中国にとっては「苦難と闘争の十四年」の現実でしかなかった。このことを、私たち日本人は研究者ならずとも、片時も忘れてはならない。

冒頭の酒井順一郎発表による問題提起を受け、諸発表は言語文化、言語教育(日本語教育)、官吏養成のシステム、教科書記述の諸問題など多岐にわたっている。なお、掲載論考には「満洲」「満州」が混在しているが、著者原文を尊重して統一をしていない。論攷は9本収めれたが、本シンポジウムでは「満洲」関係に絞って発表会を行うこととしたことをお断りしておきたい。

 皆様のご参加をお待ちしています。

 

開催日  2022年4月29日(金)オンライン会議 13:00開始 (参加費無料)

*不正アクセスを防ぐため、ZOOMのミーティングID及びパスコードは、以下のアドレス宛にご連絡くださり、後日、メールにてお知らせします。その際、件名を「新世紀人文学研究会ZOOMのID他依頼」とご記入くださいませ。

 酒井順一郎:j.sakai@ip.kyusan-u.ac.jp

 

 

 

13:00-13:10

開会の挨拶:田中寛(新世紀人文学研究会代表、大東文化大学名誉教授、亜細亜綜合企画工房)

 

13:10-13:25

「満洲事変90周年に想うこと―学生との対話を通して―」

―― 問題提起  酒井順一郎(九州産業大学)

 

13:25-13:55

満洲国」の教師・学習者・文教部関係者の戦後をたどる

―文教部関係者が述懐する「満洲国」の日本語教育― 

―― 伊月知子(愛媛大学)

 

13:55-14:25

「九・一八事変(満州事変)」は日本の戦中戦後の教科書の中で

どのように記述記載されてきたのか                  

―― 北島順子(大手前短期大学)

 

14:25-14:55

保科孝一・富山民蔵論争から見る「満洲国」日本語普及とその後

―― 酒井順一郎(九州産業大学)

 

14:55-15:05 休憩

 

15:05-15:35

「満洲国」における官吏の養成―大同学院を中心に―

―― 祝利(九州大学)

 

15:35-16:05

満洲国の教科書とアイデンティティ形成

―― アンドリュー・ホール(九州大学)

 

16:05-16:35

「満洲」という歴史と感情の記憶―研究の視角と射程―

―― 田中寛(新世紀人文学研究会代表、大東文化大学名誉教授、亜細亜綜合企画工房)

 

16:35-17:05

シンポジウム・総括(全体質疑:現状と展望) 司会:酒井順一郎(九州産業大学)

 

17:05-17:15

閉会の挨拶:田中寛(新世紀人文学研究会代表、大東文化大学名誉教授、亜細亜綜合企画工房)

​プログラム
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